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12話-3 正式な花嫁候補とご命令。

ผู้เขียน: 空野瑠理子
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-20 20:00:00

すると魔は破壊され、光と共に浄化されると同時に 門の一部が崩れ落ちた。

「……ブラン伯爵邸まで届けば良かったものを」

「……しかし門はディアムが開け、きっちりと締めたはずなんだが、人一人分開いてるということは魔の仕業か? それともここの者の仕業か?」

「……いずれにしてもおかしいことに気付けなかった。それにフェリシアの魔除けは万全だった。にも関わらず何故フェリシアばかり狙われる? やはり秘められた力が関係しているのか?」

エルバートが小声で何やら呟くも聞こえなかった。

エルバートが追いかけて来なかったら、間違いなく、自分は自分でなくなっていたし、死んでいただろう。

「追い付けて良かった。フェリシア、大丈夫か?」

エルバートに心配され、

フェリシアの両目から大粒の涙が零れ落ちる。

どうしてここで涙が出るの?

心の痛みも感じるの?

魔に襲われそうになり、怖かったのか、

正式な花嫁候補に選ばれず、物凄く落胆して傷付いたせいなのか、

緊張が切れたせいなのか、

ここ2週間、寝不足だからなのか、

もうよく分からないけれど、涙が溢れて止まらない。

一ヵ月後、出て行く身なのに、

こんなの困らせるだけなのに。

エルバートは切なげな顔をし、何も言わずにフェリシアをただ抱き締めた。

その後、ディアムとエルバートの母の執事も駆け付け、

ディアムに心配されると、

現れた魔を浄化した際に門の一部が崩れ落ちたことをエルバートが伝え、

エルバートの母の執事は自身が修復すると笑顔で言いつつも目が笑っていなかった。

そして早く帰った方が良いと、

ディアムに馬車に乗せられたのは良いものの、

フェリシアはエルバートに命じられ、隣に座らされた。

エルバートは肩をそっと抱き寄せる。

「あ、あの!?」

「また魔に襲われるかもしれないからな」

「それに疲れただろう、このまま眠れ」

「い、いえ、ご主人さまこそお疲れなのでは……」

「私がこうしていたいのだ」

「それにお前のビーフシチューには1番驚かされた」

「至高の味だった」

「だから父上のことは気にするな、忘れろ」

「お前を決して出て行かせるものか」

「ご主人さまっ……」

フェリシアは嬉しさとドキドキでいっぱいで最初は眠れそうになかった。

けれど、 いつしか 安心感に包まれ、 眠りについた。

* * *

「そうか、ブラン伯爵邸が魔に襲われたのは、虚言であったか」

翌日の朝のこと。皇帝の間でルークス皇帝が跪くエルバートに話しかける。

「はい、宮殿に嘘の通達をするなど許し難い行為。母上の代わりにお詫び申し上げます」

髪を麻紐で一つにくくり、高貴な軍服を着たエルバートは深く頭を下げた。

「まあ、許す。しかし、お前も大変であるな」

「正式な花嫁候補をアマリリス嬢に決められるとは」

「…………」

「不服そうであるな」

「それは今は良いとして、昨日の帰り、例のお前が胃袋を掴まれた女、フェリシアと言ったか? 誠に魔に襲われたのか?」

「はい。しかしながら、たいした魔ではなかった為、すぐに浄化致しました」

「なら良いが、そのフェリシア自身にますます興味が湧いた」

「フェリシアに一度会ってみたい」

「しかし、フェリシアは一ヵ月後、ブラン公爵邸を出ていくのだろう?」

「困ったな、配慮したいところではあるが、我も忙しい上、すぐには難しい。だが、よし、決めた」

「エルバートよ、晩夏の2日前に、ここに連れてまいれ」

「かしこまりました」

エルバートは跪いたまま、深々と頭を下げ、扉から皇帝の間を出て、廊下を歩く。

麻紐で一つにくくった髪が微かに揺れる。

まさか、ルークス皇帝にフェリシアを会わせることになるとはな。

何事も起きないといいが。

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    「フェリシア様が記憶を喪失してしまわれるだなんて……」アマリリス嬢が動揺した声を上げると、エルバートの父は右手で顔を覆う。「ルークス皇帝までも上回る魔の出現だと?」「そしてルークス皇帝を危険に晒したとなれば軍師長の座を降ろされるのは間逃れないか」「旦那様……」エルバートの母が声をかけ、エルバートはアマリリス嬢を見る。「よって、フェリシアの記憶喪失、そして一時とはいえ、ルークス皇帝を危ない目に合わせてしまった私はまだ未熟である為、アマリリス嬢とのご婚約は破棄させて頂きたく思います」アマリリス嬢が両目を見開くと、エルバートの母が怒りの声を上げる。「ご婚約を破棄するですって!? エルバート、どれだけブラン家に泥を塗るおつもりなの!?」「そもそも、本日の魔の出現はフェリシアさんが原因ではなくて?」「ブラン伯爵邸の付近に魔が出現したのだって、フェリシアさんが訪れた日だったもの。間違いないわ」「だからこれ以上、フェリシアさんとエルバートが関わることを私は決して認めなくてよ」「それに、貴方のことを忘れたのなら丁度良いじゃない。あんな不吉なお人など責任を全て負わせ、今すぐお捨てなさい」「そして、エルバートには旦那様がお決めになられた通り、2日後、アマリリス嬢をブラン公爵邸に住まわせ」「アマリリス嬢と正式にご婚約して頂くわ」エルバートの母がそう啖呵(たんか)を切った。「どこまでフェリシアを愚弄すれば気が済む」エルバートはとてつもない冷ややかな殺気を放つ。まさに、その時だった。失礼致します、と皇帝の側近が扉を開け、中に入って来た。「ルークス皇帝により直々にお言葉を頂戴致しましたので伝達に参りました」「このお言葉は皇帝専用の医務室におられるフェリシア様、ディアム様にも伝わるようになっております」ルークス皇帝がお言葉を?

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   15話-2 触れさせない。

    フェリシアの言葉を聞き、エルバートとルークス皇帝は両目を見開く。まだ混乱している、のか?「フェリシアよ、我のことは分かるか?」「ルークス皇帝……?」ルークス皇帝のことは分かるようだな。「フェリシア、私はエルバート・ブランだ」「エルバート・ブラン?」フェリシアはその名前を口にした瞬間、頭痛が起きて意識を失い、くたっとなった。「フェリシア!!」エルバートは叫ぶ。「エルバートよ、これより酷な事を言うが」「フェリシアの身体は大事ないようだが、どうやら頭を打ちつけたこと、そして魔の影響で一部の記憶を」「お前の記憶を喪失したようだ」エルバートの瞳が揺らぐ。まさか、そのような、嘘だろう?エルバートは切なげな顔でフェリシアを強く抱き締める。「フェリシア……」その後、皇帝の間に皇帝の側近、ディアム、兵達が駆け入り、ルークス皇帝が魔に襲われエルバートと共に浄化したことを伝え、念の為、ルークス皇帝も共に皇帝専用の医務室へ行くこととなった。そしてルークス皇帝とエルバートは大事なく、フェリシアは頭に包帯を巻き、ベットで安静となると、エルバートはルークス皇帝の前に跪く。「ルークス皇帝、責任を取り、私は軍師長を降ります」「エルバートよ、その必要はない。軍師長を辞める事は、許さん」「しかし……」「ただ、このままでは示しが付かないと我の側近が不祥事としてお前の両親に通達をした」「もうじき、宮殿に来るによって対面し、起こった事を全て伝えることとなる。良いな?」「承知致しました」* * *やがて、エルバートの父であるテオと母のステラ、そしてアマリリス嬢が馬車で宮殿に到着し、客間に案内され、待機の状態になったとのことで、エルバートはディアムにフェ

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   15話-1 触れさせない。

    * * *「フェリシア!!」エルバートの悲痛な叫び声が皇帝の間に響き渡る。フェリシアが魔に弾かれた時、彼女の口元が微かに動いたように見え、お ま も り で き てよ か っ たそう言っているように思えた。恐らく、フェリシア自身は気付いていない。心の中で思った言葉が自然と口に出たのだろう。エルバートはフェリシアの元に駆けようとするも、ルークス皇帝の姿が目に入り、ぐっと堪える。フェリシアを今すぐにでも助けたい。だが、(私はルークス皇帝に仕える身。ルークス皇帝を優先に守らねば)エルバートは切なげな顔を浮かべる。すまない、フェリシア。少しの間、待っていてくれ。エルバートは冷酷な顔で剣に手をかけ、抜く。「魔め、フェリシアをよくも!」「ルークス皇帝には触れさせない」魔は袖の中で左右の手を合わせ礼をする仕草から両袖をバッと広げ、少し見えた左右の手から黒き液体のような炎を無数に放つ。エルバートはその炎を瞬時に斬り、浄化していく。だが、一部の炎が軍服の袖を少しかする。すると袖が少し溶けた。袖だけで済んだが、この炎は触れたものを全て溶かすらしいな。魔は炎を放ち続け、エルバートも斬り、浄化し続ける。「くっ」これではキリがない。そう思った時だった。神の憤りのような物凄い気迫を感じた。すると魔も感じ取ったのか固まる。「エルバートよ、我と共闘せよ」玉座から立ち上がったルークス皇帝が気迫を放ちながら言い、玉座の踏段を凛々しい光を司る神のような姿で下りてくる。そして、エルバートの隣で剣を抜く。「今から詠唱を唱える」「お前にも詠唱の言葉を脳裏に流すによって、続けて唱えよ」「はっ! ルークス皇帝の仰せのままに」エルバートがそう答

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   14話-2 皇帝とご対面。

    「フェリシア、そしてエルバートよ、顔を上げよ」フェリシア達は跪きながら顔を上げる。(帽子のショートベール越しでは、よくルークス皇帝のお姿が見えないわ…………)「フェリシアよ、顔が良く見えん。帽子を取れ」フェリシアは命じられた通り、帽子を取る。すると、天蓋付きの玉座につくルークス皇帝の姿が鮮明に両目に映った。美しい紫髪に、エルバートが言っていた通り、優しく穏やかな雰囲気で、(まるで、神様のようだわ)「ほう、これは別嬪であるな」フェリシアは唖然とし、エルバートも驚く。(わたしが別嬪!? お世辞かしら…………)「フェリシアよ、会えて嬉しく思うぞ」「どうだ? ここは心地良いだろう?」そう言われて気づいたけれど、確かにとても気分が良く、体も軽くなっているような。「はい、とても心地が良いです」「ここは特別な結界で守られているからな」「そして今日、エルバートにここに連れて来させたのは、お前のことを知りたいと思ったからだ」「よって、フェリシアよ、我の元へ上がってまいれ」「か、かしこまりました」(わたしのようなものが、ほんとうに上がっても良いのかしら…………)フェリシアはそう思いつつもルークス皇帝に命じられた通り、玉座の踏段を上がっていく。するとルークス皇帝が玉座から立ち上がる。「右手の甲を差し出せ」「は、はい」フェリシアは右手の甲を差し出す。「少しの間、触れる」ルークス皇帝はそう言い、フェリシアの右手の甲に触れた。そしてルークス皇帝は納得すると、触れるのを止める。「エルバートよ、そのような顔をするな」(あれ……? ご主人さま、な

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